欧州最大の3Dプリント集合住宅がフランスで完成——建設工期を半減した施工革命
フランスで欧州最大規模の3Dプリント集合住宅が完成した。工期を従来比で大幅に短縮した今回のプロジェクトは、建設業の自動化・省人化トレンドを一気に加速させる可能性を持つ。
フランス北東部で竣工——800㎡・3階建て・12戸、欧州最大の3Dプリント集合住宅
2026年、フランス北東部でAction Logementグループ傘下のPlurialNoviliaとドイツの建設機械メーカーPeri 3D Constructionが共同で、3Dプリント集合住宅「ViliaSprint²」を完成させた。延床面積は約800㎡、地上3階建て、12戸の社会住宅で構成される。欧州でこれまでに建設された3Dプリント建築の中で最大規模だ。プリンターにはデンマークCobod社の「BOD2」を使用。印刷工程は当初50日を見込んでいたが、実際にはわずか34日で完了した。躯体工事の期間を従来工法と比較して約半分に圧縮し、全体工期では3カ月の短縮を実現している。さらに注目すべき点がある。今回のプロジェクトでは、耐力構造と全壁面をすべて現場で直接印刷した建物としてフランス初の事例となった。現場打ちコンクリートを採用したことで輸送コストと排出ガスも削減。コンクリートはスイスのHolcim社が供給した合成マクロ繊維補強タイプを使用している。印刷作業はわずか3名のオペレーターがタブレット端末で管理した。
なぜ今この技術が注目されるのか——人手不足・コスト高・環境規制が重なる建設業の課題
建設業界が抱える構造的課題は日本に限った話ではない。欧州でも熟練技能者の高齢化と労働人口の減少は深刻で、フランスでは社会住宅の供給不足が政治課題になるほど住宅建設の需要が逼迫している。一方でインフラ工事や住宅建設のコストは資材費・人件費ともに上昇傾向にある。こうした状況下で、3Dプリント工法が持つ「少人数施工・短工期・省廃材」という三つの特性は、建設DXの本命技術として急速に評価が高まっている。ViliaSprint²では現場廃棄物を約半減させた。曲線形状の印刷が可能になることで余剰コンクリートが減少し、使用コンクリート量自体も約10%削減できた。また、プリキャスト床スラブの最適化導入によって印刷ガントリーの移動回数を半減させ、全体の印刷効率を大幅に押し上げた。単層建物が多かった従来の3Dプリント建築から、3階建ての集合住宅へとスケールアップした今回の成果は、業界にとって技術的な転換点を示している。
日本の建設業界・建設機械市場への影響
日本でも3Dプリント建設への関心は着実に高まっている。2024年には国内で2階建て3Dプリント住宅の建築確認が初めて取得され、制度面での整備も前進した。しかし産業規模での普及はまだこれからだ。今回のフランス事例が日本市場に与える示唆は大きく三つある。第一に、省人化効果の実証。3名のオペレーターによる印刷管理は、慢性的な現場作業員不足に悩む建設会社にとって極めて魅力的なモデルだ。第二に、重機・建設機械メーカーへの波及。Peri 3D ConstructionやCobodのような専門プレーヤーが台頭する中、コマツ・日立建機・竹中工務店など日本の主要プレーヤーが3Dプリント施工機器や制御システムにどう参入するかが競争軸になりつつある。第三に、建設コストの見通し。Peri社は次のプロジェクトで2台のプリンターを同時稼働させ、印刷時間をさらに4分の1に短縮し、従来工法並みのコストを目指すと表明している。施工効率と安全管理の両面で優位性が証明されれば、日本の発注者サイドの調達判断にも影響が出てくる。
今後3〜5年の展望と注目ポイント
Peri 3D Constructionは次フェーズとして40戸規模の集合住宅を2台のプリンターで同時施工する計画を進めている。これが成功すれば、3Dプリント工法は「実験的技術」から「量産可能な施工手段」へと格上げされる。日本では住宅・社会インフラ・災害復興住宅などへの応用ポテンシャルがあり、建設DXの文脈でテレマティクスやICT建機との連携も視野に入ってくる。今後注目すべきは、コスト平価の実現時期、日本の建築基準法対応の進展、そして国内建設機械メーカーによるプリンタープラットフォームへの参入動向だ。
よくある質問(FAQ)
Q: 3Dプリント建設は従来の建設工法と比べてどれくらいコストが違うのですか?
A: 現時点では従来工法より高コストのケースが多い。しかしPeri 3D Constructionは複数台プリンターの同時稼働によって、近い将来に従来工法と同等コストを実現できると見込んでいる。規模の拡大と工程最適化が鍵だ。
Q: 日本で3Dプリント建設を導入する際の法的な障壁はありますか?
A: 日本では建築基準法上の構造安全性の確認が必要で、3Dプリント工法専用の基準はまだ整備途上だ。2024年に国内初の2階建て3Dプリント住宅が建築確認を取得しており、制度整備は前進しているが、集合住宅規模への対応はこれからとなる。
Q: 3Dプリント建設では通常の重機オペレーターのスキルは活かせますか?
A: 印刷工程自体はタブレット操作が中心で、従来の重機操作とは異なるスキルが求められる。ただし基礎工事・仕上げ・設備工事では油圧ショベルやクレーンなど従来の建設機械が引き続き必要で、ハイブリッドな現場スキルが今後の標準になる。
まとめ
フランスの「ViliaSprint²」は、3Dプリント建設が集合住宅レベルで実用段階に入ったことを示す明確な証拠だ。工期半減・廃棄物半減・少人数施工という成果は、日本の建設業が直面する人手不足とコスト上昇に対する有力な解の一つとなりえる。建設機械・施工技術の最新動向はkenki-pro.comで継続チェックしてほしい。