スウェーデンがロールスロイス製の小型モジュール炉(SMR)3基を採用し、40年ぶりとなる原子力発電所の新設に踏み切る。合計出力1,410MWの大型インフラ工事は、欧州の建設市場に大きな波紋を投げかけている。

📌 この記事のポイント

  • ロールスロイスSMR3基(各470MW、合計1,410MW)がスウェーデンの電力網向けに選定。40年ぶりの原子力新設プロジェクトが正式始動
  • SMRは建設現場での組み立て工法を前提とした設計であり、土木・建設機械メーカーの新たな需要源となる可能性が高い
  • 日本でも原子力回帰の議論が進む中、国内建設業・重機メーカーが欧州のSMR建設動向から学ぶべき実務的教訓がある
海外建設プロジェクト 原子力建設(写真提供:652234 / Pixabay)
海外建設プロジェクト 原子力建設(写真提供:652234 / Pixabay)

ロールスロイスSMR3基を選定——プロジェクトの全容

スウェーデン政府は2026年6月、ロールスロイスが開発する小型モジュール炉(SMR)を3基採用することを決定した。各炉の出力は470MWで、3基合計では1,410MWになる。これはスウェーデンの電力網に直結する形で整備される計画だ。

SMRの最大の特徴は「モジュール型」という工法にある。従来の大型原子炉が現地での膨大な土木・建設工事を前提としているのに対し、SMRは工場で製造したモジュールを現場で組み上げる方式を採る。つまり、建設工期の短縮と品質管理の標準化が同時に実現できる。現場目線で言えば、最も影響を受けるのは「大型クレーンと精密輸送に特化した重機オペレーターとゼネコンの施工体制」だろう。数百トン規模のモジュールを高精度で据え付けるには、クレーンの能力選定と地盤改良が工程全体のボトルネックになる。

スウェーデンが原子力新設に動くのは実に40年ぶりだ。1980年代の脱原発決議から方針を転換し、再生可能エネルギーだけでは安定供給に限界があると判断した結果がこの選定につながった。エネルギー安全保障の観点から原子力を見直す流れは、北欧に留まらず欧州全体で加速している。

なぜ今「SMR」なのか——欧州エネルギー政策の地殻変動

欧州でSMRへの関心が急速に高まった背景には、エネルギー価格の高騰と脱炭素目標の両立という構造的な矛盾がある。

風力・太陽光の普及は進んだが、出力変動をカバーするベースロード電源の確保が課題として残り続けた。そこへ登場したのがSMRだ。大型炉よりも初期投資を抑えられ、段階的な増設が可能という点が政策立案者に刺さった。ロールスロイスは英国でも同様のプロジェクトを推進しており、欧州全体でのSMR建設ラッシュが現実味を帯びてきた。

この動きが示唆するのは、「原子力建設」が特殊な土木工事から「精密製造業と建設業の融合領域」へと変質しつつあるという産業構造の変化だ。工場生産されたモジュールを現場に搬入し、大型クレーンで精密に据え付ける工程は、橋梁や洋上風力タービンの据え付け工事と共通する技術基盤を持つ。つまり、既存の建設機械メーカーや重機オペレーターにとって決して対岸の火事ではない。

ここで見落とされがちなのが、SMR建設における地盤工事の重要性だ。モジュールを高精度で据え付けるには、地盤の均一性と耐荷重性が大前提となる。油圧ショベル・ブルドーザー・ホイールローダーによる地盤改良と土工管理は、SMRプロジェクトでも従来のインフラ工事と変わらない「基盤」を担う。

日本の建設業界に問われる対応力

日本でも原子力の活用拡大に向けた政策議論が本格化しており、次世代炉としてSMRが候補に挙がっている。問題はここだ。欧州でSMR建設の施工実績が積み上がる一方、日本の建設業界は長年にわたる原子力新設の空白期間を経て、施工ノウハウの継承が課題となっている。

大成建設や鹿島建設はかつての原子力建設で豊富な実績を持つが、SMRのモジュール据え付けに特化した施工体制の再構築には時間がかかる。重機調達の観点でも、数百トン級の超大型クレーンは国内の稼働台数が限られており、プロジェクトが集中すれば調達競争が起きる可能性がある。

コマツや日立建機にとっては、ICT建機・テレマティクスを活用した精密施工管理の技術をSMR建設に応用できるかが一つの試金石となる。建設DXの文脈で培ってきた施工データの可視化技術は、原子力施設特有の品質管理要件とも親和性が高い。欧州での施工事例を早期にキャッチアップし、技術連携の布石を打てるかどうか——日本の建設業界の対応力が問われる局面だ。

よくある質問

Q: SMR(小型モジュール炉)の建設工事は通常の原子力発電所と何が違うの?

A: SMRは工場で製造したモジュールを現場で組み立てる方式を採るため、従来炉より現地での大規模土木工事が少なく、大型クレーンによる精密据え付けと地盤工事が施工の核心となる。工期短縮と品質の標準化が特徴だ。

Q: ロールスロイスのSMR、日本での採用や建設の可能性はある?

A: 日本政府は次世代原子炉としてSMRを検討対象に含めており、可能性はゼロではない。ただし規制審査・立地選定・施工体制の整備など複数のハードルがあり、欧州での実績が積み上がってから本格的な検討が進むとみられる。

Q: SMR建設で活躍する建設機械・重機の種類は?

A: 地盤改良工事では油圧ショベル・ブルドーザー・ホイールローダーが不可欠。モジュール据え付けには数百トン級の超大型クレーンが必要で、精密な施工管理にはICT建機やテレマティクスを活用した建設DXの技術が有効とされている。

まとめ

スウェーデンによるロールスロイスSMR3基(各470MW)の選定は、欧州のエネルギー政策転換を象徴する決断だ。モジュール型工法は建設業の施工技術と直結しており、日本の大手ゼネコンや重機メーカーにとっても無関係ではない。欧州での施工実績の蓄積を注視しながら、SMR建設に対応できる技術・体制の準備を早める必要がある。kenki-pro.comでは引き続き原子力建設・海外インフラ工事の最新動向を発信していく。

出典:Sweden picks Rolls-Royce SMRs for first nuclear project in 40 years