
建設業界で女性リーダーが語るキャリア構築術——米国ゼネコン幹部の軌跡
米大手ゼネコン・ギルベイン社の幹部が語ったキャリア論が、建設業界の人材育成論議に新たな視点を投じている。その背景と日本の建設業への示唆を解説する。
- ギルベイン・ビルディング社バージニア州リッチモンドオフィス代表のマギー・リード氏が、テラゾー床工事からゼネコン幹部へと至る異色のキャリア経路を公開した
- 「レジリエンス(粘り強さ)」こそが建設業界参入の鍵だと同氏は主張しており、スポーツ経験がその素養を養うと指摘する
- 深刻な人手不足に直面する日本の建設業界にとって、多様な経歴を持つ人材をどう育て、現場で活かすかは喫緊の経営課題だ

テラゾー職人からゼネコン幹部へ——マギー・リード氏のキャリア
話は単純なサクセスストーリーではない。マギー・リード氏が歩んだのは、建設の「現場の底」から始まる道だった。テラゾー(大理石などの骨材を埋め込んだ装飾的な床仕上げ材)の目地処理という、一般にはほぼ知られていない職人仕事からキャリアをスタートさせた同氏は、現在、ギルベイン・ビルディング社バージニア州リッチモンドオフィスのビジネスユニットリーダーを務める。
ギルベインは北米を代表するゼネコンのひとつだ。公共施設・医療・教育分野の大型プロジェクトを手がけることで知られ、業界内での信頼は厚い。その組織の一拠点を率いるまでになったリード氏が強調するのは、華やかな学歴でも特別なコネクションでもなく、「折れない姿勢」だという。
現場目線で言えば、最も評価されるのは「壁にぶつかったときの行動」だろう。スキルは現場で積める。しかし想定外のトラブルで判断を迫られたとき、諦めずに対処し続ける粘り強さは、仕事の経験だけで簡単に身につくものではない。リード氏がラグビーから得たのは、まさにこの「崩れても立て直す感覚」だと指摘する。
なぜ今、建設業界のキャリア論が問われるのか
建設業の人材不足は、日本だけの問題ではない。米国でも深刻で、特に技能職の担い手確保は業界全体の悩みになっている。そこへきて「どういう人材が建設業に向いているのか」「どんな経歴の人間が長続きするのか」という問いへの答えを、実際に現場から這い上がった幹部が語る意義は大きい。
問題はここだ。建設業は長らく「体力さえあれば誰でも入れる業界」と思われてきた一方で、実際には複雑な施工管理・原価管理・安全管理が求められる高度な仕事の集積体でもある。この矛盾した認識ギャップが、採用広報の難しさを生んでいる。
リード氏のケースが示すのは、建設業が「チームスポーツ的な素養」を持つ人間に向いているという産業構造的な特性だ。個人技ではなく、多職種・多工程の連携の中で自分の役割を全うし、全体の完成に貢献するという構造は、チームスポーツのそれと極めて近い。
変わる人材育成観——日本の建設業界への示唆
日本の建設業界でも、人材確保は喫緊の課題だ。鹿島建設や大成建設をはじめとする大手ゼネコンは、施工管理職の多様な採用ルートを整備しつつあるが、現場の実態としては依然として「同質的な人材」に依存しがちな部分が残る。
ここで見落とされがちなのが、「職人経験者の幹部登用」という視点だ。リード氏のようにテラゾー職人として現場に入った人間が経営層に近い立場になることは、日本のゼネコンではまだ例外的な事例に留まる。技能労働者と管理職の間に厚い壁がある構造は、優秀な現場人材のモチベーションを下げる要因にもなりうる。
建設DXやICT建機の導入が加速する中、現場の実態を身体で知るリーダーの価値はむしろ上がっている。油圧ショベルの操作感覚やクレーン作業の段取りを体感として理解しているマネジメント層が増えれば、施工効率や安全管理の意思決定の質は変わる。レジリエンスの話は、単なる精神論ではない。人材戦略の根幹に関わる問題だ。
よくある質問
Q: 建設業界に転職するのに有利なスポーツ経験はありますか?
A: チームで役割分担しながら目標を達成するスポーツ経験が評価されやすい。ラグビー・サッカー・野球など集団競技出身者は、多職種連携が基本の建設現場での協調性や粘り強さをすでに持っていることが多い。
Q: 職人から施工管理や幹部になれるキャリアパスは日本にもありますか?
A: 制度としては存在するが、実際に活用している企業はまだ限られる。専門工事業者出身者を施工管理職に登用する動きは増えており、一部の中堅ゼネコンや地域建設会社では実例が出始めている段階だ。
Q: 建設業界で女性が幹部になるために必要なことは?
A: 業界経験の蓄積に加え、マギー・リード氏が強調するように「失敗しても立て直す粘り強さ」が不可欠だとされる。日本でも国土交通省が「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」を推進中で、制度環境は整いつつある。
まとめ
ギルベイン幹部・リード氏の事例が示すのは、建設業キャリアの多様性と「レジリエンス」の実用的価値だ。職人経験を持つリーダーの育成は、深刻な人手不足が続く日本の建設業にとっても参照すべきモデルになりうる。建設DXや電動化が進む現場で求められる人材像の変化も含め、最新の動向はkenki-pro.comで継続的に取り上げていく。
出典:Terrazzo joints and rugby: One Gilbane exec details her construction journey