50km先からも視認できる巨大タワーがモロッコに誕生した。ベルギーの建設大手BESIXとモロッコのTGCCによるJVが完成させたムハンマド6世タワーは、最新の建設技術と重機運用の粋を集めた海外建設プロジェクトの象徴的事例だ。

ムハンマド6世タワー完成|モロッコ史上最高層、床面積102,800㎡の全貌

2026年4月、モロッコの首都ラバトにムハンマド6世タワーが正式に竣工した。ブー・レグレグ川沿いに立つこの建物は、モロッコで最も高い建築物となり、50km離れた場所からでもそのシルエットを確認できる。外観はロケットの発射台を連想させる独特のフォルムで、建築家ラファエル・デ・ラ・ホスとハキム・ベンジェルーンが設計を担当した。開発はO Capitalグループが主導している。

総床面積は約102,800㎡に及び、内部には高級ホテル・オフィス・住居・パノラマ展望デッキを備える複合用途施設だ。エレベーターは合計36基を設置し、タワー本体に21基、低層ポディアム部分に15基を配置している。施工はベルギーの建設大手BESIXとカサブランカを拠点とするTGCCのジョイントベンチャーが担当。アフリカ大陸最高層クラスのプロジェクトを完遂した実績として、両社の国際的な評価をさらに高める結果となった。

チューブ・イン・チューブ構法と160トン制振装置|超高層ビルを支える構造技術

このプロジェクトが建設業界から注目を集める最大の理由は、その構造的な革新性にある。基礎には深さ60mに達する104本のコンクリートバレット杭を使用し、地震活動や洪水に対する高い耐久性を確保した。地盤が軟弱な河川沿いという立地条件を克服するための、入念な地盤工学的アプローチだ。

上部構造はチューブ・イン・チューブ工法を採用している。高強度コンクリートの内部コアと外周の鋼製構造フレームを組み合わせることで、横方向の荷重を効率的に分散させる仕組みだ。さらに、タワー最上部には160トンの質量制振装置(マスダンパー)を設置し、強風や地震動による揺れを大幅に低減している。こうした複合的な構造設計は、地震リスクを抱えるアフリカ・北アフリカ地域の超高層開発における新たな標準モデルとなりえる。環境性能の面でも、ポディアム屋上に2,200㎡、南側ファサードに1,800㎡の太陽光発電パネルを配置し、冷房エネルギーの削減を図るファサード設計とあわせて、省エネ建築としての高い水準を実現した。

BIMPrinterロボットが変えた施工現場|日本の建設機械業界への示唆

このプロジェクトで特に注目すべき点が、建設DXの実践的な活用だ。BESIXは2022年に、自律型トポグラフィロボット「BIMPrinter」をこのタワー施工に導入すると発表していた。BIMPrinterは建物のデジタルモデルを参照しながら、複雑な形状の間仕切り壁の輪郭をフロアスラブ上に直接トレースする。従来の手作業と比べて約3倍の速度で床面計画を完了できるとされており、施工効率の面で圧倒的なアドバンテージを持つ。

日本の建設業界でもICT建機や自動化への投資が進んでいる。しかし、BIMと自律ロボットを組み合わせたこの水準の実装事例は、海外建設プロジェクトの方が先行しているのが現状だ。特に超高層建設では、測量・墨出し・鉄筋配置などの工程に自律型重機や測量ロボットを組み込む動きが加速している。国内の建設会社や購買担当者にとって、こうした事例は調達戦略の見直しを迫るシグナルとなる。BESIX×TGCCのJV体制は、技術力と地域知見を組み合わせた国際連携モデルとしても参考になる。

今後の展望|アフリカ・中東の超高層建設市場が加速する3つの理由

ムハンマド6世タワーの完成を機に、アフリカ・北アフリカ地域の超高層建設プロジェクトはさらに活発化する見通しだ。モロッコは2030年FIFAワールドカップの共催国でもあり、カサブランカ空港の新ターミナル建設など大規模インフラ工事が続く。また、中東・アフリカ全体でBIM義務化の動きが広がりつつあり、ICT建機やテレマティクスを搭載した建設機械の需要拡大が予測される。加えて、太陽光発電と建築外皮を一体設計するBIPV(建物一体型太陽光)の普及が、新興市場での標準仕様となる可能性が高い。日本の建設機械メーカーや商社にとって、今後3〜5年はアフリカ市場への本格参入を検討する重要な局面となる。

よくある質問(FAQ)

Q: ムハンマド6世タワーの施工を担当したのはどの建設会社ですか?

A: ベルギーの建設大手BESIXとモロッコ・カサブランカを拠点とするTGCCのジョイントベンチャーが施工を担当しました。設計は建築家ラファエル・デ・ラ・ホスとハキム・ベンジェルーンが手がけ、開発はO Capitalグループが主導しています。

Q: BIMPrinterロボットとはどのような建設機械ですか?

A: BIMPrinterは、建物のデジタルモデル(BIM)を参照しながら間仕切り壁の輪郭をフロアスラブ上に自律的にトレースするトポグラフィロボットです。従来の手作業と比べ約3倍の速度で作業を完了でき、施工効率と精度を大幅に向上させます。

Q: チューブ・イン・チューブ工法は地震対策として有効ですか?

A: 有効です。内部の高強度コンクリートコアと外周の鋼製フレームを二重管状に組み合わせることで横荷重を分散します。さらに160トンのマスダンパーを最上部に搭載することで、地震・強風両方に対応した高い耐震・制振性能を実現しています。

まとめ

ムハンマド6世タワーは、超深度基礎・チューブ・イン・チューブ構法・自律施工ロボット・BIPVを組み合わせた海外建設プロジェクトの最前線事例だ。アフリカ市場の動向と最新の建設機械・ICT建機情報は、kenki-pro.comで随時更新中。ぜひブックマークして最新トレンドをチェックしてほしい。

出典:Morocco’s tallest tower inaugurated, visible for 50km